全国に広がる太陽光パネル保証金制度――秩父市・皆野町・大崎市などの取り組み
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太陽光発電の普及が進む一方で、いま自治体が注目しているのが、「太陽光発電設備を最後にどう撤去・処理するのか」という問題です。
太陽光パネルは永久に使えるものではありません。事業を終えるときには、パネルや架台などを撤去し、適正に処理・リサイクルする必要があります。
しかし、事業者が撤退したり、倒産したりした場合、撤去・廃棄のための費用が確保されていなければ、設備が放置される可能性があります。
そこで近年、自治体の条例によって、将来の撤去・廃棄費用をあらかじめ確保する「保証金制度」を設ける動きが広がっています。
Reeeleでは、これまで「北海道釧路市の保証金制度について」「神戸市の太陽光発電施設における保証金制度について」を紹介してきました。
今回はその続編として、秩父市・皆野町・大崎市の3自治体に注目します。同じ「保証金制度」でも、自治体によって考え方や仕組みには違いがあります。
まずは5自治体を比較
これまで紹介した釧路市・神戸市と、今回取り上げる3自治体を並べてみると、それぞれの特徴が見えてきます。
| 自治体 | 特徴 | 保証金制度のポイント |
|---|---|---|
| 秩父市 | 保証金+保険 | 大規模事業の廃棄費用に加え、事故・災害にも備える |
| 皆野町 | 地域との共生+保証金 | 設置規制や住民への周知などと一体で管理 |
| 大崎市 | 国制度との役割分担 | 国の解体等積立金などを利用していれば保証金は不要 |
| 釧路市 | 廃棄費用の確実な確保 | 保証金の預入れ+市との質権設定を設置許可の基準に追加 |
| 神戸市 | 早くから制度化 | 10kW以上を対象に撤去費用の保証金を義務化 |
つまり、全国でまったく同じ制度が導入されているわけではありません。
自治体ごとに、
「大規模発電所を重点的に管理する」
「地域との共生を重視する」
「国の制度を補完する」
など、それぞれ異なるアプローチが取られています。
① 秩父市――「保証金+保険」で将来のリスクに備える
最初に紹介するのは、埼玉県秩父市です。
秩父市では、「秩父市太陽光発電設備の適正な設置等に関する条例」により、太陽光発電設備の設置だけでなく、維持管理や撤去までを含めたルールを設けています。
秩父市の最大の特徴は「保証金だけではない」こと
大規模太陽光発電事業について、FIT制度に基づく解体等積立金を積み立てない場合、事業者は廃棄等費用に相当する保証金を金融機関に預け入れ、市と質権設定契約を締結する必要があります。
さらに特徴的なのが、損害賠償責任保険や火災保険・地震保険等への加入も求めていることです。
つまり秩父市では、「事業終了後の廃棄費用」だけでなく、「事業期間中に起こる事故や災害」にも備える仕組みになっています。
秩父市のここがポイント
保証金だけでなく、保険まで組み合わせて太陽光発電事業のリスクを管理している。
これが秩父市の大きな特徴です。
また、保証金については、事業者が必要な撤去等を行わず、市が行政代執行によって対応する場合に、その費用へ充てることができる仕組みも設けられています。
「将来、事業者がいなくなったらどうするのか」という問題まで想定した制度設計になっています。
② 皆野町――「保証金」だけでなく地域との共生まで考える
次に紹介するのが、同じ埼玉県の皆野町です。
皆野町では、2025年4月から「皆野町太陽光発電設備の適切な設置等に関する条例」が施行されています。
この条例では、10kW以上の太陽光発電事業を対象とし、その中でも、2ha以上または2,000kW以上の事業を「大規模太陽光発電事業」としています。
皆野町の特徴は「地域との共生」
皆野町の制度は、廃棄費用の確保だけを目的としたものではありません。
太陽光発電設備の設置による、
- 災害
- 自然環境への影響
- 生活環境への影響
- 景観への影響
などを防ぐことも条例の目的としています。
そして大規模太陽光発電事業については、FIT制度に基づく解体等積立金を積み立てない場合、廃棄等費用に相当する保証金を金融機関に預け入れ、町との間で質権設定契約を締結する仕組みが設けられています。
つまり、
設置場所をチェックする
↓
地域住民への説明を行う
↓
安全・環境面を管理する
↓
将来の撤去費用も確保する
というように、太陽光発電事業を地域との関係も含めて管理しています。
皆野町のここがポイント
「廃棄費用を確保する」だけでなく、「地域とどう共生するか」まで条例で管理している。
秩父市と似た保証金制度を採用しながらも、地域環境や住民との関係を重視している点が特徴です。確保できるかという視点で保証金額が決められています。
③ 大崎市――「国の制度があれば、自治体の保証金は不要」
3つ目は、宮城県大崎市です。
大崎市では、「大崎市自然環境等と再生可能エネルギー発電設備設置事業との調和に関する条例」により、再生可能エネルギー発電設備についてさまざまなルールを設けています。この条例は2025年4月にも改正されています。
大崎市の制度で特に注目したいのが、国の制度との関係を明確にしていることです。
国の積立制度を利用している場合は?
大崎市では、廃棄等費用を確保するために保証金を金融機関へ預け入れる仕組みがあります。
一方で、再エネ特措法に基づく解体等積立金を積み立てている場合などは、自治体独自の保証金を不要とする仕組みが設けられています。
これは非常に重要なポイントです。
つまり、
国の制度で廃棄費用を確保している
↓
さらに自治体へ保証金を預ける
という二重の負担を避ける考え方です。
大崎市のここがポイント
国の制度と自治体の制度を役割分担させている。
自治体独自の制度を作るだけではなく、すでに存在する国の制度を踏まえて、「どこまでを国が担い、どこを自治体が補うのか」を整理している点が大崎市の特徴です。
また、事業者が必要な措置を行わず、市が行政代執行を行った場合には、保証金をその費用に充てることができる仕組みも設けられています。

(宮城県大崎市役所)
3自治体を比べると、それぞれの違いが見えてくる
今回取り上げた3自治体を整理すると、次のようになります。
| 秩父市 | 皆野町 | 大崎市 | |
|---|---|---|---|
| 主な特徴 | 保証金+保険 | 地域との共生+保証金 | 国制度との役割分担 |
| 対象 | 大規模事業を重点管理 | 10kW以上+大規模事業を区分 | 条例対象となる再エネ事業 |
| 保証金 | ○ | ○ | ○ |
| 質権設定 | ○ | ○ | ○ |
| 保険 | ○ | ○ | 条例上の保証金制度が中心 |
| 国の積立との関係 | 国の積立をしない場合に 保証金 | 国の積立をしない場合に 保証金 | 国の積立等があれば 保証金不要 |
| 特徴的な考え方 | リスクへの備え | 地域との共生 | 国制度との補完 |
このように見ると、3自治体の違いが分かりやすくなります。
秩父市
「もしもの事故・災害まで含めて備える」
皆野町
「地域と共生できる太陽光発電にする」
大崎市
「国の制度と自治体制度を組み合わせる」
同じ「保証金」という仕組みでも、目的や制度設計にはそれぞれの自治体の考え方が表れています。
では、釧路市・神戸市と比べると?
Reeeleでは、これまで釧路市と神戸市についても紹介してきました。この2自治体を加えると、全国で広がっている動きがさらに分かりやすくなります。
神戸市――早くから「保証金」を制度化
神戸市では、2019年7月施行の条例に基づき、10kW以上の太陽光発電施設を対象に、適正な維持管理や撤去費用の確保などを求めています。現在も、廃棄等に必要な費用を保証金として事前に金融機関へ預け入れることを義務付けています。
また、近年の条例改正では、従来の保証金の算定にリサイクル費用等が十分に含まれていないことなどを課題として挙げ、太陽光パネルの廃棄・リサイクルをめぐる新たな課題への対応を進めています。
神戸市の特徴は、「保証金制度を早い段階から制度化し、現在も制度を見直していること」です。
釧路市――「確保」から「確実に使える保証金」へ
そして、Reeeleでも先に紹介した釧路市です。
釧路市では、2026年に条例改正が進められ、保証金の預入れと市との質権設定契約の締結を設置許可の基準に追加することとしています。改正規定は2026年12月下旬から施行予定とされています。
ここで重要なのは、単に「廃棄費用を準備してください」と求めるのではなく、
金融機関に保証金を預ける
↓
市が質権を設定する
↓
事業者が撤去しない場合などに、保証金を廃棄等費用に充てられる
という仕組みにしていることです。
釧路市の制度は、まさに「将来の撤去費用を確実に確保する」ことに重点を置いた仕組みといえます。
自治体ごとに違うからこそ、今後の動きに注目
全国の自治体が同じ制度を導入しているわけではありません。しかし、「太陽光発電を設置するときから、撤去・廃棄まで責任を持つ」という方向性は、少しずつ広がっています。

今後、太陽光パネルの大量廃棄が現実的な課題となる中で、こうした自治体の取り組みはさらに重要になっていくでしょう。
Reeeleが目指す「パネルのその先」
太陽光発電は、再生可能エネルギーとしてこれからも重要な役割を担っていきます。
だからこそ、発電している間だけではなく、役目を終えた後まで責任を持つ仕組みが必要です。
「誰が撤去するのか」
「撤去費用をどう確保するのか」
「撤去したパネルをどこへ持っていくのか」
「どのようにリサイクルするのか」
これらを一つひとつ整備していくことが、持続可能な太陽光発電につながります。
Reeeleでは、太陽光パネルのリサイクルや資源循環について、今後も自治体や国の制度、業界の動きを分かりやすく発信していきます。
太陽光パネルを「廃棄物」で終わらせない。
設置から撤去、そして次の資源へ。
太陽光発電の「その先」まで考えることが、これからの太陽光発電には求められています。
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